君を愛していいのは俺だけ

 洗い物を済ませ、キッチンカウンターに置かれていたアルコールティッシュでテーブルを拭く。

 ひと通りの片付けを終えると、陽太くんもごみをまとめ終えたようで、キッチンで手を洗ってから冷蔵庫の缶ビールを出し、ソファに座った。


「仁香も来て」
「っ……うん」

 ふたりきりになった時だけの特別な呼び方に、鼓動が大きく跳ねる。
 この瞬間を待ち望んではいたけれど、いざとなったらぎこちなくて、緊張で身体を固くしたまま彼の隣に座った。


「江藤に掴まれたところ、大丈夫?」
「あ、平気ですよ。そんなに力強くされたわけじゃないので」

 私がそう答えると、彼は大きく息をついてビールを煽った。


「それならいいけど……俺は嫌だったな。仁香が他の誰かに触れられるのは耐えられない」

 思いがけない彼の言葉に、胸の奥でドキドキと鼓動が急く。
 期待してしまいそうだけど、彼が私を好きでいてくれるはずはないと冷静を促す自分もいて、心の中が忙しい。


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