君を愛していいのは俺だけ

「そのままの意味だよ。仁香が他の男に狙われれば妬くし、触れられたら嫌な気分になる」
「どうして? だって私……」

 もう別れているのに。
 今は、社長と社員でしかないんでしょ?
 この気持ちは、今でも片想いなんだよね?

 陽太くんが今の私を好きになってくれる理由はないと思うし、ずっと好きでいてくれたはずもない。


「ねぇ、仁香。この前、お互いのことを少しでも知っていこうって言ったけど、撤回させてくれる?」
「えっ!?」
「少しずつじゃ足りないんだよ。今の仁香も離れている間の仁香も、手に入れたい」

 タイミングよく、リビングのどこかに置かれている時計が小さく鳴った。
 ふと腕時計に視線を落とすと、ちょうど真上に針が重なっている。


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