君を愛していいのは俺だけ

「違うよ。仁香のいいところは残ったまま、一層魅力的な子になったと思う。だから、会社でも滝澤とか他の男が仁香を狙ってる気がして仕方ないし」

 彼は褒めてくれるけれど、もっと今の私を知ったら、『思っていたのと違った』なんて言われかねないような……。


「そろそろ出ようか。散歩でもしながら色々話そう」

 お会計に財布をバッグから出すと、彼はカードで支払ってしまった。


「いくら出したらいいかな?」
「気持ちだけもらっておくよ」
「でも……」

 私も彼のことは好きだけど、まだ復縁したわけではないし、恋人同士でも毎回ご馳走になるのは違う気もするし……それに、この前の表参道のお店と慰労会も、社長室の忘年会も彼のポケットマネーだったはず。


「いいんだよ。少しくらい彼氏っぽいことさせてほしいだけだから」

 店員に見送られ、エレベーターを待つ間にお礼を言うと、彼は満足げに微笑んだ。


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