君を愛していいのは俺だけ

 けやき坂の向かい側にあるカフェに入り、ゆったりと座れるソファ席に腰を落とす。
 陽太くんは、買ったばかりのグラスとワインの袋をそっと置き、ふうっと息をついた。


「陽太くん、疲れちゃった?」
「ん? なんで?」
「ため息ついた気がして」
「違うよ、緊張してるんだよ。仁香がかわいいから」

 言われた方が恥ずかしくなるようなことをサラッと言った彼は、何食わぬ顔でメニューを広げた。


「オーガニックのダージリンにしようかな。仁香は?」
「私は、アッサムのミルクティーがいい」

 茶葉から選べるカフェがあるなんて知らなかったなぁ。何気なく入ってきたけれど、彼なら何度か来ていそうだ。さっきも近くの店でシャンパンクーラーを買ったって言ってたし……。


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