君を愛していいのは俺だけ

「陽太くん、ごめんね」
「なにが?」

 てっきり宿泊するものだと思っていたのに、そんな素振りを全く見せない彼は、私を助手席に乗せて再び夜の街を走り出した。


「素敵なプレゼントを用意してくれてたのに、お返しになるものがなくて」

 まさかプレゼントを用意してくれているなんて思わなかったから、お返しになるものがない。
 今からなにか買おうにも、この時間では閉店している店がほとんどだろうな……。


「あぁ、いいよ。そんなこと気にしないで。俺が仁香を喜ばせたくてしただけだからさ」
「でも……クリスマスだし」

 付き合ってはいないけれど、クリスマスプレゼントくらい用意したっておかしくなかっただろう。
 毎年恒例の女子会だって、金額の上限を決めてプレゼント交換をしたこともあったのに。


「デートに誘ったのも昨日だから、買う時間もなかったでしょ? だからいいんだよ」
「陽太くんはいつ買っておいてくれたの?」
「秘密。格好つけたいから言わせないで」

 微笑みを浮かべ、ハンドルを握る彼の横顔に見惚れていたら、表参道のイルミネーションが近付いてきていた。


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