君を愛していいのは俺だけ
南青山三丁目の交差点で停車させた彼は、赤信号を見つめている。
「なに?」
「……これから仁香の家に送っていくけど」
「うん……」
やっぱり、もう帰らなくちゃいけないのかな。
しゅんとしながらも、できるだけ表情は明るくしようと不器用に口角を上げた。
明日も約束してるんだし、気持ちを切り替えよう。その方が彼だって今日のデートを楽しかったと思ってくれるだろうし、明日も楽しみにしてくれるはず。
「泊まる準備してきてくれる? マンションの前で待ってるから」
「えっ!?」
彼の言葉に、耳を疑う。
返事ができないうちに、信号が切り替わって車が走り出した。
私は運転している彼の横顔をただただ見つめ続け、外苑西通りを行く車内で動揺をありありと瞳に映した。