君を愛していいのは俺だけ

「あの、いいんでしょうか」
「大丈夫だよ。今は打ち合わせも入っていないし、社長はコミュニケーションを大切にする人だから」

 左右に部署が分かれたフロア内を通り、一番奥にあるガラス張りの部屋の前へ。


「失礼いたします。――社長、今よろしいですか?」

 親切な先輩が、社長の様子まで窺ってくれている。前職ではありえない光景に感動すら覚えた。


「いいって。どうぞお入りください」
「ありがとうございました」

 一礼して、先輩が開けてくれていたドアの向こうへ足を踏み入れる。
 部屋の奥にあるデスクから、私を見ている彼と目が合った瞬間、ドキドキと鼓動が鳴り出した。


「お忙しいところすみません」
「いいよ。どうしたの?」

 社長と社員として、初めてまともに接するのに、彼はとてもフランクだ。
 そして、やっぱり周防社長は“陽太くん”だとしか思えなくなった。


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