君を愛していいのは俺だけ
「失礼します」
「どうぞ」
デスクで作業していた彼は、手を止めて背もたれに寄りかかり、私を見つめた。
彼の瞳に映されるだけで、またひとつ鼓動が鳴り、彼が腰を上げて近づいてくるたびに緊張してくる。
ソファに腰を落とすと、彼も正面に座った。
よりによって、今日は来客があったからかスーツを着ていて、見惚れてしまうほど格好いい。
グレンチェックの重厚感ある生地を見れば、仕立ての良さが分かる。しかも、それをサラッと着こなしてしまう彼の容姿はいつにも増して色っぽく、目のやり場に困った。
「佐久間から聞いてると思うけど、引き継ぎ業務をなるべく早く終わらせて、こっちの仕事に取り掛かる時間を取ってほしい」
「はい、MDとも調整しています」
「会議にも出席してほしいから、四月を待たずに積極的に顔を出してくれる?」
「かしこまりました」
彼の視線も声色も、やわらかで優しい。
それだけで、否応なしに胸の奥が締め付けられた。