君を愛していいのは俺だけ

 真っ赤な顔で席に戻ったら、佐久間さんに心配された。


「無理しないで、キツかったら早退していいからね」

 体調が悪いと思われたのか栄養ドリンクを差し入れられ、申し訳ない気持ちになっていると、外出のために執務室から出てきた陽太くんが出てきた。


「秋吉さん、大丈夫? 無理しないでいいからね。お大事に」

 私の全身を紅潮させた張本人のくせに……陽太くんは意地悪だ。
 佐々木さんも念を押して帰宅を促し、彼と一緒に出かけてしまった。

 せっかくもらった栄養ドリンクを飲み干し、強引に仕事に集中しようとしたけれど、突然の出来事にドキドキしたまま。
 しばらく構ってもらえていなかった間、彼のことばかり考えるようになってしまっていて……気付けばもう戻せなくなるほど、毎日が陽太くんで色づけられてしまっている。



「最後の戸締り、お願いしますね」
「はい。お疲れ様でした」

 MDから持ち込んだ資料の確認をしていると、十八時四十五分を回っていた。
 先輩社員が帰宅してしまい、彼が言っていた通り十九時にはひとりきりになった。


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