君を愛していいのは俺だけ

 ローテーブルを挟んだ向かい側にいる彼が、じっと見つめてくる。


「あの……なにをお話したらいいでしょうか?」

 見つめられても困る。
 ただでさえ、夢に見るほど大好きな元彼に似ていて、どうしても意識してしまうのに。


「ごめん、かわいい子が入社したなぁって思ってたから、つい見惚れた」
「えぇっ!?」

 あはは、と彼は笑っているけれど、そんなことを言われるなんて思っていなかったから、驚きがそのまま声になった。


「前は、どんな仕事をしてたの?」
「アパレルです。SUNRISERとも提携がありました」
「そうなんだ。じゃあMD職は、経験が活かせるね」
「頑張ります」

 私の緊張を解そうとしてくれた冗談だったんだろうな。
 じゃなきゃ、社長があんなことを言うはずがないもの。


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