君を愛していいのは俺だけ
「帰るの?」
「陽太くん!!」
大胆不敵な痴漢に遭ったと勘違いしそうだったけど、予期せぬ再会に胸がときめく。
「食事に行かない?」
「うん!」
エスカレーターを上りきると、彼は私の手を取って歩き出す。
周りに社員や彼を知る人がいたらと視線を泳がせるものの、飛ぶように速い彼の歩調に合わせていたら、改札を抜けて電車に乗っていた。
「あー、ドキドキした」
少し息を切らしている私を見て、彼は楽しそうに微笑んだ。
「誰かに見られちゃったかもしれないよ?」
「こういうのも社内恋愛の醍醐味かなと思って。それに、社外では恋人でいたいんだよ」
混み合う車内で吊革のない位置に立った私を、彼はしっかりと支えてくれている。
頼りがいのある腕の中にいると、一緒にいられる幸せで自然と笑顔になった。