君を愛していいのは俺だけ

 てっきり外食するものだと思っていたけれど、彼はまっすぐ自宅へと足を向けた。

 ポストから郵便物を取った彼に再び手を引かれ、二十八階の自宅へ。
 約二ヶ月ぶりに訪れた彼の部屋は特に変わったところはなく、リビングにバッグを置いてコートを脱ぐと、彼がスーツベスト姿でやってきた。


「ある程度食材はあるから、なにか作って食べよう」
「うん。陽太くんは料理できるの?」
「自分が食べるのに困らない程度にはね。人に振る舞うようなものは作れないよ。仁香は?」
「私は、料理学校に通ったりしてたから……たぶん得意な方かな」

 彼と再会するまでの間、あらゆる習い事をした。
 料理や書道、英会話、それからSUNRISERに入社してから通ったWEB系の短期スクール。
 その中で一番楽しくて続いたのが料理教室だった。


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