君を愛していいのは俺だけ
スーツベストの背中に手が滑る。
二十二センチ上にある彼を見上げてキスをしていたら、大きな手が私の髪をかき分けてそっと支えてくれた。
聞こえてくるのは、ぐつぐつと煮える鍋の音と、キスの音。
なんだか恥ずかしくてふと目を開けたら、ずっと見つめられていたと気づいて、思わず唇を離した。
「……足りない」
「っ!!」
強引に私の手を引いた彼は、鍋の火を止めてキッチンを後にし、リビングの大きなソファに私を押し倒した。
「待って」
「もう十分待った」
彼は舌を絡めて言葉を奪いながら、Yシャツのボタンをいくつか外していく。
「ご飯食べないの?」
「仁香のほうが美味しそう」
「んっ……陽太くん」
首筋や耳にもキスをたくさん落とされるたびに身体を捩る。
だけど、彼はもう待ってくれそうにないし、瞳から放たれる熱に、視線を下げた。