君を愛していいのは俺だけ

「ねぇ……っ」
「ん?」

 答えてくれない彼は、キスをやめる様子がない。
 私が口を開けば、それを塞いで邪魔をしようとしているかのようだ。


「陽太くん」
「……俺を見る練習だよ」
「見る練習?」

 意味が分からなくて、気持ち程度に首を傾げただけなのに、それすら彼は「かわいい」と言って、またキスをしてくる。
 私の唇が熱くなってきたところで、彼は不意にキスを止めて、じっと見下ろしてきた。



「……ほら、数秒と持たずに逸らす癖あるだろ?」
「違うよ、そういうのじゃない」
「ちゃんと俺を見ててよ」

 距離を取っては見つめ、キスの直前で止める陽太くんは、ちょっと意地悪だ。
 恥ずかしさと、彼への想いが強すぎて目を逸らすと、また一からやり直しになった。


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