君を愛していいのは俺だけ

「ごめん。やっぱり今日は帰すよ」
「陽太くん、あのね」
「なに?」

 私がまたつれない態度を取ったと思われたかな。
 仕事があっても一緒にいたいって言ってくれたのに……半ば諦めたような声色だった気がする。


 今、胸の奥にある気持ちを言葉にして伝えたら、もうちょっと彼との関係を進められるかな。
 再会してからのこれからは、ふたりのもの。
 想いを重ね合わせて一緒に作っていかなくちゃいけないと思うから。


「本当は、帰りたくないの。でも、ちゃんとしたいなって思ってて」
「どういう意味?」

 彼は私の髪を指で梳きながら、言葉を待ってくれる。


「私が今の陽太くんに似合うような人になるにはどうしたらいいか、毎日考えてるところだから……」
「そんなの気にしなくていいよ。俺は条件を並べた上で仁香を好きでいるわけじゃない」
「うん……でも、まだ……心の準備もできてないし」
「え!?」

 勇気を出して言ったのに、彼は目を丸くして私を見つめた。


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