君を愛していいのは俺だけ

「っ、だから、待って」

 それなのに、彼は私を破顔したまま抱きしめてきて。


「俺は、その心積もりはあるけど」
「うん……」
「今夜そうしようとか、次のデートでとか、決めてもいなかったんだけど」

 ドキドキと鼓動が鳴って、彼の腕の中で身体が火照っていく。


「でもさ、今決めた」
「っ!!」

 そっと見上げると、とても優しい表情で私を見つめてくれている彼と視線が交わった。
 二秒も経たずに恥ずかしくなってまた俯こうとしたら、半ば強制的に見つめ合わされ、秒を追うごとに頬が熱くなる。
 次に耳が色を変え、全身に緊張と予感が駆け巡って、最後に鼓動が一層大きく鳴った。


「こうやって、仁香が俺を見つめられるようになったら、愛してあげる」

 その理由を尋ねたけれど、彼は勿体ぶって教えてくれなかった。


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