君を愛していいのは俺だけ

 ほんの少しだけ春を感じるようになった三月。
 あとひと月もすれば新入社員が入ってきて、私もいよいよ社長室勤務になる。


「では、秋吉さんからひと言お願いします」

 今夜はMDの同僚が、わざわざ送別会を企画してくれた。
 社長室に異動しても関わりがなくなるわけじゃないのに、かわいがってくれた先輩は寂しいと言ってくれて、早くも私の涙腺は緩んできていて。


「……まだSUNRISERに入って半年程度なのに、こんなに温かい職場に迎い入れてもらえたこと、本当に感謝しています――」

 私のお礼が終わると、部長が乾杯の音頭を取った。


 金曜の夜だからか、みんなお酒が進んでいる。
 私も勧められたけど、飲んでるから大丈夫と上手く交わした。


 実は、今朝からなんだか調子が悪くて、アルコールが喉を通らない。
 食事もあまり食べたくなくて、途中で席を立って外の空気を吸いに出た。


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