君を愛していいのは俺だけ

 夜風が冷たい。
 渋谷の街はどこでも賑やかで、静かなところにいたくなる。
 すぐに店内に戻ってお手洗いに寄り、申し訳ないけれど一次会で帰ろうと決めた。


「秋吉さん、ラストオーダーだって」
「もうそんな時間なんですね」

 先輩と話しながら、自分の席へ。
 隣に座っている滝澤さんが携帯をチェックしているのは、きっと桃子ちゃんから連絡があったのだろう。


「桃子ちゃんから?」
「正解。先に部屋で待っててくれてるみたいなんだけど、早く帰ってきてって……せめて二次会くらいはね。秋吉さんも行くでしょ?」
「う、うん……そうだね」

 私のために集まってくれているのに、自分の体調を理由にしてひと足先に帰るのは無理かと諦めた。


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