君を愛していいのは俺だけ

 私が真っ赤な顔で用件を聞いている間も、彼は凛々しい表情を崩さず、「じゃあ、引き続きよろしく」と言って、なにごともなかったようにしていた。

 片手で頬を隠しながら、そそくさと自席へ着く。
 執務室から出てくるたびに赤面していたら、隠し通せるものも隠せなくなりそうだ。
 もし、周囲に知られてしまうようなことになれば、きっと陽太くんは私のせいだって言うんだろうな……。



 定時を三十分ほど回ったところで退社して、こっそり彼の自宅へ向かう。
 マンションの近くにあるスーパーで食材を買う間も、つい鼻歌を歌ってしまいそうなほど上機嫌だ。彼が帰ってきた時、どんな顔をするかと思うと楽しみで仕方がない。


 玄関を開けると、彼の部屋の匂いがして胸の奥がきゅんと鳴る。
 陽太くんのことならなんでも反応してしまうようになったのは、ただ想い続けていた七年間よりも、今は幸せに満ちていてとびきり甘酸っぱいからだと思う。


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