君を愛していいのは俺だけ
帰宅のメッセージを受け取ってから四十分ほど経った頃、玄関ドアの開閉音が聞こえた。
外から見上げたら分かってしまうと思い、キッチンの照明だけ点けていたけれど、それも消して夜景の明るさを頼りに、ダイニングテーブルの下へ身をひそめる。
膝を抱えて身体を小さくすると同時に、リビングのドアが開いた。
「あー……疲れた」
普段聞くことのない彼のひとりごとに耳を澄ませる。
コンビニに寄ってきたのか、ビニール袋が頭上のテーブルに置かれる音がした。鈍く響いたのは、缶入りのお酒だろうな。
ダイニングチェアの背に無造作に掛けられたスーツジャケットとネクタイが見える。買ってきた缶を開けた音がして、なにかを飲んでいる様子だ。
「仁香なにしてんのかな……。っていうか、今日くらいこっちに来てくれたらいいのに」
ぼやいている彼が愛しくて、身を潜めているテーブルの下から出て行きたくなる。