君を愛していいのは俺だけ
「……あれ?」
陽太くんがダイニングテーブルに缶を置いた音がした。
そして、彼が息を吸っているような気配に、ハッとする。
「なんかいい匂いがする」
余ってしまってもルーを入れたらカレーにアレンジができるよう、肉じゃがを作っておいたのはいいけれど、その匂いを消すまでは考えていなかった。
キッチンに入った彼は、冷蔵庫を開けて隠しておいた鍋を出し、私の存在に気づいたようだ。
「仁香、いるの?」
「…………」
いずれはここから出て行くことになるだろうけど、まだ見つかるまいと息をひそめて気配を消す。
寝室の方へ向かった彼の足音にホッと息をつき、じっと動かずに耳を澄ませる。
二分と経たずに慌ただしくリビングに戻ってきた彼が目の前を往復している間、私は声を押し殺して顔を伏せた。
「見ーつけた」
「っ!!」
しゃがんでダイニングテーブルの下を覗き込んだ彼は、椅子の陰にいた私に微笑みかけた。