君を愛していいのは俺だけ
お気に入りのパジャマが見当たらず、もしかしたら彼の洗濯物に混ざってしまったのかもしれないと思い、彼の自室へ入った。
この家のどこでも入っていいと言われているから、今までも何度か足を踏み入れてきたけれど、先日帰宅した彼が持ち帰ってきた紙袋がそのまま置かれているのが気になって、中を覗いてみた。
見開きの綺麗な台紙と一緒に、封筒がひとつ。
そっと手に取って開いてみると、綺麗な微笑みを浮かべたお嬢様風の女性が写っていた。
私なんかよりも何十倍も美しい佇まいのその人は、釣書によるとメガバンクの頭取の令嬢で。
不安がせりあがってきて、鼓動が嫌な音を立てる。
一緒に暮らそうって、約束したばかりなのに。
……この人と、お見合いをするの?
袋に残っているリーフレットは、都内の一流ホテルのもの。
そして、予定されている日付は、彼が非公開にしている五月の予定と同じ日だった。