君を愛していいのは俺だけ
「お客さん、どこまで行きますか?」
「あ……この辺でいいです」
適当に停めてもらって降り立ったのは、六本木の街。
陽太くんと付き合う前、彼がクリスマスデートをしてくれた時間が思い出される。
一緒に写真を撮って、ペアグラスを買ったりして。
私をまた彼女にしたいと、気持ちを伝えてくれて。
嬉しかったな……。
楽しくてあっという間だった。
特別な時間はいつまでも続かないって、七年前に思った通りだ。
彼の恋人としての日々は、そう遠くないうちに終わってしまう気がして、涙がにじんでくる。
「お姉さん、ひとり?」
三十分以上、煌びやかな街並みをぼんやりと眺めていたら、サラリーマン風の男性に声を掛けられた。
「……そうですけど」
「よかった。俺もひとりなんですよ。今、会社の集まりの帰りで」
「そうですか」
私にはまったく関係のない話を始めたその人と、意識的に距離を置く。