君を愛していいのは俺だけ
「最初から言うこと聞いてくれたらよかったんだよ、お姉さん」
男性が私の荷物まで取り上げ、勝手に手を繋いでくる。
「触らないで」
「逃がさないからな」
強引に指まで絡められて、気持ち悪いと思った。
陽太くん以外の人に触れられることは、こんなにも嫌なんだと思い知る。
それほど、陽太くんしか見えなくて。
陽太くんしか、愛せないのに……。
突然、目の前にバッグが落ちた。
引っ張られるように歩き出していたはずの足が止まり、男性がよろめいている。
「なにすんだよ!」
「それはこっちの台詞。俺の女に手を出すな」
息を切らし、鋭い瞳で男性を睨みつけている陽太くんが、奪い返すように私を抱きしめた。