君を愛していいのは俺だけ

「最初から言うこと聞いてくれたらよかったんだよ、お姉さん」

 男性が私の荷物まで取り上げ、勝手に手を繋いでくる。


「触らないで」
「逃がさないからな」

 強引に指まで絡められて、気持ち悪いと思った。
 陽太くん以外の人に触れられることは、こんなにも嫌なんだと思い知る。

 それほど、陽太くんしか見えなくて。
 陽太くんしか、愛せないのに……。



 突然、目の前にバッグが落ちた。
 引っ張られるように歩き出していたはずの足が止まり、男性がよろめいている。


「なにすんだよ!」
「それはこっちの台詞。俺の女に手を出すな」

 息を切らし、鋭い瞳で男性を睨みつけている陽太くんが、奪い返すように私を抱きしめた。


< 385 / 431 >

この作品をシェア

pagetop