君を愛していいのは俺だけ

 怯んだ男性が逃げるように去っていく。


「陽太くん……どうして?」
「…………」

 きっとすごく怒ってるんだろう。
 特に今夜は、面倒なことばかり起こして……。

 だから、なにも言ってくれないんだよね?

 それなのに、抱きしめられる力はどんどん強くなって、愛しい温もりと共に涙を誘う。



「――バカ」

 一層強く抱きしめられて、彼の胸元に顔が埋まり、たったひと言呟いた彼と目を合わせることもできなくなった。

 だけど、その息遣いは震えている気がする。


「なんで携帯の電源切ってるんだよ」
「っ……」
「どうして部屋で待ってなかった? こんな遅い時間にひとりで歩いていいわけないだろ?」
「だって……っ!!」

 言い訳なんて聞かないと言わんばかりに、彼は私の唇を奪った。


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