君を愛していいのは俺だけ
「仁香が家を出たのは俺のせいだって分かってる」
「……ごめんなさい」
「謝らなくていいよ。お見合いの予定、見たんだろ?」
涙やらなんやらでグチャグチャになった私の顔を見つめ、やんわりと笑みを浮かべる彼は、いつもの陽太くんだ。
「俺が怒ってたのは、連絡が取れなかったこと。それから、そんなことをさせた俺自身に腹が立ってた」
「……別れるんじゃないの?」
「え? 俺たちが?」
頷いたら、彼に抱きしめられて。
背中をあやす彼の手のひらの感触と、抱きしめてくれる温もりに少しずつ落ち着きを取り戻す。
「そんなこと、考えたこともないよ。仁香を手放すなんて二度とない」
潔く言い切った彼は、瞳に私を映す。
そして、どちらからともなく唇を重ね、流れのままに押し倒されて。
「俺から離れるなって、言っただろ? 愛していいのは俺だけだって、何度も言わせるな」
また彼は、その言葉で私を縛り付けた。