君を愛していいのは俺だけ

 ――五月吉日。

 世間は大型連休で、街には家族連れの姿が多い。


 彼と暮らしている南青山のマンションに、今日はひとり。

 お見合いは断ると言ってくれたから、それ以上の詮索はせずにいたけれど、当日を迎えたらやっぱり落ち着いていられるはずもなくて。




 十一時。
 お見合いの予定時刻になって、おもむろに携帯を手に持った。

 広いリビングから、街を見下ろす。
 マンションの周りに設けられた庭園を、住人が散歩しているのが見えた。だけど、この高さからでは表情までは窺えない。

 彼も、あの綺麗な人と散歩をするのかな。趣味や仕事のことを話したりして……。
 想像しただけで妬いてしまう。彼の隣に他の女性がいるなんて、耐えられない。


 帰りに連絡をすると言ってくれたから、それを待つばかり。
 何時になったら終わるのかもわからない上に、待っている時間は嫌味なほどゆっくり進む。

 楽しい時間はあっという間なのにな……。


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