君を愛していいのは俺だけ

 流れているテレビの内容はまったく頭に入らず、聞き流してばかり。

 心変わりして、やっぱりお見合い相手の令嬢を選んだらどうしよう、とか。
 私がそうだったように、誰か身代わりで来てたりして、とか。

 とにかく落ち着いていられず、テレビも消してリビングを後にし、寝室のベッドに寝転がった。


 陽太くんの匂いがする。
 愛してやまない彼の片りんを見つけては、きっと大丈夫だと暗示をかけた。


「早く終わって……」

 連絡が入っていないかと携帯を確認しても、通知はない。


 今日何度目か分からないため息をついたら、メッセージが表示された。



【仁香、家にいる? ちょっとお願いしたいことがあるから、ホテルまで来てほしいんだけど】
【ホテルって、どこの?】
【見合いしてるところ】

 彼が困っているなら助けるしかないと、意を決して家を出た。


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