君を愛していいのは俺だけ

 抱きしめていた腕を緩め、約二十センチ上から見下ろす。
 セミロングの髪が綺麗に後方へ流れ、黒目がちな瞳に俺が映っている。


「……どうしたの?」
「ん?」

 不意に問いかけてきた彼女に、やんわりと聞き返した。


「なんだか、切なそうに見えたから」
「仁香に気づかれるほどか……」

 何の気なしに言い当てた彼女に、愛しさが募る。


「っ!? 陽太くん」

 彼女を抱き上げて、寝室のドアを軽く蹴って開け、いつも一緒に眠っているベッドに押し倒した。
 ベッドサイドにバッグを置き、トレンチコートやスーツジャケットを無造作に脱ぎ捨てた。


「仁香が欲しくなった」
「えっ!?」

 突然のことに戸惑っている彼女の唇を、キスで封じる。


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