君を愛していいのは俺だけ
「お疲れ様です!」
デートの待ち合わせのように、思わず小走りになってしまった。
それほどに心が弾むし、彼の姿を見ただけで胸の奥がギュッと狭くなって苦しくなる。
「お疲れ様。ごめんね、帰るところだった?」
「いえ。社長からご連絡いただいたら、帰るつもりでいたので」
「俺の返事を待っててくれたの?」
「……はい」
本音を漏らしたら、彼がちょっとだけ微笑んで、セキュリティーにIDをかざした。
「午前中に連絡くれてたのに、待たせてしまったね」
「大丈夫です。急にお願いしたのは私の方なので」
社長室フロアには、未だ多くの社員が残っていた。
帰宅した人もいるようだけど、やっぱり社の舵取りをする部署はやることも多いのだろう。それに他の部と比べても少数精鋭で、ひとりひとりの裁量が大きいんだと思う。
周防社長が特に信頼を置いている社員が集まるフロアには、初日に私を案内してくれた先輩の姿もあった。