イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「ア、アデル様!」

フェリクスが慌ててセシルの体を男から受け取った。
セシルはフェリクスの腕にしがみつきながら、呆然と男を見る。
なにも言えないセシルの代わりにフェリクスがこの男を睨んだ。

「我が主人をお助けいただき感謝申し上げます。会合の参列者様とお見受け致しますが、その身なり、髪の色、ご年齢から察するに、貴方様は――」

男がすっと姿勢を伸ばし、威圧的にセシルたちを見下した。

「フランドル伯爵家当主・ルーファスだ。父亡き後、爵位を授かり初めてこのような会合に参加したが……まったく、退屈だったな」

男――ルーファスは腰に手を当てて不機嫌そうに吐き捨てた。
すると今度は、子どもなら見た瞬間泣き出すであろう鋭利な視線をセシルに向けて、ニヤリと笑った。

「して、従者よ。そこの軟弱な子どもはどこの誰なんだ?」

完全にバカにしたような言い方に、さすがのセシルも腹が立った。
装いからして自分よりも格下だと確信しているのかもしれない。

ふらつく体に鞭打って立ち上がると、毅然とした表情を作り、胸を張って答えた。

「ローズベリー伯爵家の長男・アデルだ。病床の父の代わりに参った」

「ほう、ローズベリー拍の……」

品定めするかのような視線が、セシルの全身をひと舐めする。

セシルは女の中では背が高い方だが、同世代の男からすれば当たり前だが見劣りする。
線の細さも、十五の青年という設定にしては異常だろう。
その腕で剣を振るえるのかという問いに関しては、実際のところ、訓練はしているものの酷い腕前だ。
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