イジワル騎士団長の傲慢な求愛
中央のフードの男がゆっくりとその手をセシルたちの方へと伸ばした。
人差し指を突きつけ、小さな声で呟く。
「やれ」
それを合図に、両側のふたりの男が動いた。
左の巨体があっさりとフェリクスの体を壁へ突き飛ばし、右の長身がセシルの背後に回り羽交い絞めにする。
「アデル様!!」
「なにをす――」
背後から口に布を噛まされて、セシルの叫びはあっという間に掻き消された。
主人に走り寄るフェリクス。しかし、その腹に左の巨体が膝を入れる。
かなり強い一撃だった、フェリクスの体はうしろへ飛び、地面に転がり胃液を吐き出す。
フェリクス! と名を呼んだつもりだったが、口を封じられて情けない呻き声しか出ない。
その間に、中央で悠然とかまえていた男がセシルに歩み寄り、胸ぐらを捕まえた。
「今、その不正を暴いてやる」
低くしゃがれた声とともに、男がセシルの胸もとの絹衣を引きちぎった。
「――っ!!」
鎖骨の下のあたりまで肌があらわになるセシル。
ぞっと恐怖に震えが走り、喉の奥から押しつぶしたような叫びが漏れた。
ベストのおかげで、ギリギリ胸の膨らみは隠れている。
けれど、胸に巻いていた包帯は露出してしまい、これを引き剥がされたらと思うと、言いようのない危機感がセシルを襲った。
羽交い絞めにされながらも、セシルは必死に足を蹴りだし、男を遠ざけようとする。
しかし、しゃがれ声の男は鬱陶しそうな顔をしただけだった。
終いには腹を一打され、抵抗することもできなくなる。
「……この件が露見すれば、ローズベリー家は終わりだ」
そう吐き捨てた男が、セシルの包帯に手をかけた。
(嫌だ……!)
セシルがぎゅっと目を瞑った、そのとき。
「なにをしている」
響いてきたのは、よく通る低い声。
人差し指を突きつけ、小さな声で呟く。
「やれ」
それを合図に、両側のふたりの男が動いた。
左の巨体があっさりとフェリクスの体を壁へ突き飛ばし、右の長身がセシルの背後に回り羽交い絞めにする。
「アデル様!!」
「なにをす――」
背後から口に布を噛まされて、セシルの叫びはあっという間に掻き消された。
主人に走り寄るフェリクス。しかし、その腹に左の巨体が膝を入れる。
かなり強い一撃だった、フェリクスの体はうしろへ飛び、地面に転がり胃液を吐き出す。
フェリクス! と名を呼んだつもりだったが、口を封じられて情けない呻き声しか出ない。
その間に、中央で悠然とかまえていた男がセシルに歩み寄り、胸ぐらを捕まえた。
「今、その不正を暴いてやる」
低くしゃがれた声とともに、男がセシルの胸もとの絹衣を引きちぎった。
「――っ!!」
鎖骨の下のあたりまで肌があらわになるセシル。
ぞっと恐怖に震えが走り、喉の奥から押しつぶしたような叫びが漏れた。
ベストのおかげで、ギリギリ胸の膨らみは隠れている。
けれど、胸に巻いていた包帯は露出してしまい、これを引き剥がされたらと思うと、言いようのない危機感がセシルを襲った。
羽交い絞めにされながらも、セシルは必死に足を蹴りだし、男を遠ざけようとする。
しかし、しゃがれ声の男は鬱陶しそうな顔をしただけだった。
終いには腹を一打され、抵抗することもできなくなる。
「……この件が露見すれば、ローズベリー家は終わりだ」
そう吐き捨てた男が、セシルの包帯に手をかけた。
(嫌だ……!)
セシルがぎゅっと目を瞑った、そのとき。
「なにをしている」
響いてきたのは、よく通る低い声。