イジワル騎士団長の傲慢な求愛
その場にいる全員の視線が、その声の主へと集まった。

そこにいたのは、白金の髪に深蒼の瞳。
煌びやかな外套に身を包んだ、長身の精悍な男。

つい今しがた、さんざんセシルを罵倒し尽くした、ルーファス・フランドル伯爵――その人だった。

思いもよらない闖入者に、ローブの男たちは身を強張らせる。

三対三――セシルとフェリクスがまともな戦力としてカウントできない状況で、けっして有利とはいえないにも関わらず、ルーファスは余裕すらうかがわせる堂々たる態度で男たちを威圧した。

「この宮廷で揉め事を起こすとは。お前たち、それなりの覚悟があるんだろうな」

射殺すような目線で一歩、また一歩と近づいてくるルーファス。
しゃがれ声の男は一瞬躊躇ったが――

「行け!」

ルーファスへ向けて手を振りかざし、両脇の男へ突撃を命じる。
しかし、男たちの拳が届く前に。

「遅い」

流れるような動作で攻撃を交わしたルーファスがカウンターへ転じる。
ひとりは脚で脇腹を凪ぎ、もうひとりは拳でみぞおちを打ち、男たちはあっさりと地面に崩れ落ちた。

起き上がろうとした男の肩口を靴裏で蹴り飛ばし、地面へ転がす。
腰の剣を抜くまでもない。
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