イジワル騎士団長の傲慢な求愛
ルーファスの言う通りだった。
危機感が足りないと言われれば、返す言葉もない。

横でいまだ腹部を押さえてうずくまっているフェリクスが沈痛な面持ちでふり仰いだ。
この事態を予測できなかったことに責任を感じているのかもしれない。

うつむき委縮したセシルを見て、ルーファスはいたたまれない顔で嘆息する。
仕方なく、セシルの腕を自らの肩にかけ、助け起こした。

「……立てるか?」

「だ、大丈夫だ、自分で立てる!」

腕を振り払って自立しようとしたセシルだったが、足がもつれてよろけ、再び膝をついてしまう。

ルーファスは大きなため息をひとつ。
それからセシルの膝の裏に手を入れて抱き上げた。

「な、なにを!?」

「歩けないんだろう。おとなしくしていろ」

淡々と言い放ったあと、フェリクスに目配せする。

「悪いがあんたの面倒までは見れない。自力で歩いてくれ」

そう告げて歩き出すルーファスを、フェリクスは慌てて追いかけてくる。

ルーファスは特になにを気にした様子もなく、平然とセシルの体を抱きかかえて歩いている。
しかし、セシルとしてはたまったものではない。こんなみっともない姿を往来の人々に晒すわけにはいかない。
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