イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「は、離せ!」

「恥ずかしいのなら、顔を隠していろ。おい、それを貸せ」

ルーファスはフェリクスが肩から掛けていた一枚布の外套を外させると、セシルの頭に被せた。
視界を塞がれなにも見えなくなり、セシルは駄々をこねる子どものように脚をバタバタさせる。

「おい!」

「これなら人の目も気にならないだろう。腰の剣が恥ずかしければ、従者にでも持ってもらえ」

すかさず剣を固定するベルトが外された。おそらくフェリクスの手によるものだろう。

「……お心遣い、痛み入ります」

どうやらフェリクスはルーファスの行為に甘える気らしい。

「っこら、フェリクスもなんとか言え! 主人がこんな扱いをされているんだぞ!」

「そうは言いますが、私の力ではアデル様をお運びできませんので」

「そういうことじゃないだろう! 自分で歩けるって言ってるんだ!」

「いちいちうるさいガキだ。大人しくしろ!」

突然ルーファスの腕に力がこもる。暴れるセシルを抑えつけるためだろう。
しかし不意に強く抱きすくめられ、セシルの鼓動は大きく跳ね上がった。
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