イジワル騎士団長の傲慢な求愛
馬車を降りたルーファスと入れ替わるようにしてフェリクスが乗ってくる。
「……アデル様、お顔が真っ赤です」
「うるさい!」
御者の手によってキャリッジの扉が閉められ、やがて馬をムチ打つ音が聞こえた。
ガタガタと馬車全体を揺らしながら車輪が回り始める。
フェリクスとふたりきりになったセシルは、とうとう緊張の糸がプッツリと切れ、大きなため息とともに姿勢を崩した。
表情がアデルのものからセシル自身の情けないものに、ふにゃりと戻る。
胸の痛みはまだ完治しないものの、一連のドタバタ騒ぎでいつの間にかそれどころではなくなっていた。
「ごめん、心配かけてしまって。フェリクスは大丈夫? 怪我は……」
「私は問題ありません。それより、セシル様」
フェリクスは片眼鏡の奥の瞳を鋭くして、重苦しい表情で呟いた。
「……もう限界ですね」
突然そんなことを言われてセシルは目を見開く。
「今回の件で、ハッキリしました。セシル様、男装はもう無理でしょう。すでにあなたの存在に疑念を抱くものが出始めている」
息が詰まって、セシルは瞳を伏せる。
今日襲ってきた三人の男。彼らは『不正を暴く』と言ってセシルの衣服を破ろうとしていた。
セシルが女であることに勘づいており、その証拠を探していた、と考えるのが妥当だろう。
「……アデル様、お顔が真っ赤です」
「うるさい!」
御者の手によってキャリッジの扉が閉められ、やがて馬をムチ打つ音が聞こえた。
ガタガタと馬車全体を揺らしながら車輪が回り始める。
フェリクスとふたりきりになったセシルは、とうとう緊張の糸がプッツリと切れ、大きなため息とともに姿勢を崩した。
表情がアデルのものからセシル自身の情けないものに、ふにゃりと戻る。
胸の痛みはまだ完治しないものの、一連のドタバタ騒ぎでいつの間にかそれどころではなくなっていた。
「ごめん、心配かけてしまって。フェリクスは大丈夫? 怪我は……」
「私は問題ありません。それより、セシル様」
フェリクスは片眼鏡の奥の瞳を鋭くして、重苦しい表情で呟いた。
「……もう限界ですね」
突然そんなことを言われてセシルは目を見開く。
「今回の件で、ハッキリしました。セシル様、男装はもう無理でしょう。すでにあなたの存在に疑念を抱くものが出始めている」
息が詰まって、セシルは瞳を伏せる。
今日襲ってきた三人の男。彼らは『不正を暴く』と言ってセシルの衣服を破ろうとしていた。
セシルが女であることに勘づいており、その証拠を探していた、と考えるのが妥当だろう。