イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「やはりそれが本性か、お転婆娘」

「お転婆なんてもうしません! これからは立派な女性として――」

「女性というのは、お前の姉のように色気のある女を言うんだ」

「な、なんですって!?」

咄嗟にルーファスの胸をポカリと叩いたら、その手を捕まえた彼がしてやったりとニヤついた。

「そうやって素直にしていればいい。無理して女らしくなろうなどと考えるな」

「なんでそんなこと言われなきゃならないの!」

「その方がお前は魅力的だからだ。世の女すべてが同じではつまらないだろ」

顔を目の前にして近い距離で囁かれ、なぜだかセシルの心は大きく疼く。
くるくると意地悪に変わるルーファスの表情に魅せられてしまう。

どうしてこんなにも目が離せなくなってしまうのだろうと、セシルの心は乱されていく。
この男には、見るものを魅了する華々しさがある。

ムッと頬を膨らませていると、ルーファスはふと声のトーンを落として言った。

「安心しろ。真実を知っても、婚約を破棄になどしない」

ルーファスの顔がどことなく物悲しそうに歪んだ。

「……お前さえ、それを望むのなら……」

どこか影を含んだ、消え入るような声。

目を瞬かせもう一度見たときには、いつもの気高いルーファスの横顔に戻ってしまっていた。

そこへ客間の扉が開く音がして、遠くにルシウスの姿が見えた。

ルシウスはキョロキョロと辺りを見回して、隣の部屋のルーファスに気がつくと、声を張り上げた。
< 47 / 146 >

この作品をシェア

pagetop