イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「ルシウス様とルーファス様は、仲がよろしいのですね」

なに気なく言った言葉なのだか、ふとルシウスは笑顔に影を落とした。

「ええ。双子ですから。性格も得意なことも違いますが、通じ合うものがあるのです。特に言葉を交わさなくても相手の考えていることはわかります。ですから、今ルーファスは……」

うつむき言葉を濁らせるルシウス。

「ルシウス様……?」

具合でも悪いのだろうか? セシルは心配になって彼を覗き込んだ。

「……いえ。それにしても、本当に見事な庭だ」

何事もなかったかのようにルシウスは顔を上げる。
なにか大切なことをはぐらかされたような気がして、セシルは不安に駆られた。

そこへ――

「そんなところにいらっしゃったのですね」

声に振り向くと、屋敷へと通じる木戸のところにシャンテルが立っていた。
セシルとルシウスの姿を微笑ましく眺めながら向かってくる。
そのうしろにはルーファスまでいて、どうやらセドリック伯爵との話は終わったようだった。

「このあとお帰りになるのも大変でしょう。今夜は泊まっていってくださいね」

シャンテルの言葉に、ルシウスはルーファスの反応をうかがう。ルーファスが頷いたのを確認して、ルシウスは軽く頭を下げて感謝の意を表した。

「ご厚意、感謝いたします」

「ごゆっくりなさってください」
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