イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「……まったく。なにを考えてる。隣の部屋にはルシウスがいるんだぞ」

どういう意味だがわからず、セシルはきょとんと首を傾げる。
そんなセシルの姿を見て、ルーファスはさらに苛立った。

「こんな時間にそんな恰好で、嫁入り前の女が男の部屋にくるな! ルシウスが知ったらどうする!」

自分の服装を見てセシルはハッとする。
セシルの夜着もルーファスと同じく、普段のドレスよりもずっと薄くて布地が少なく、無防備だ。
自分がそうであるように、ルーファスも目のやり場に困っているのだろうか。

「ご、ごめんなさい」

「とにかく、声を控えろ。それで、用はなんだ」

「ええと……昼間のお礼を言いに」

「なんだ、そんなことか」

うつむきもじもじとしているセシルを軽く眺めながら、ルーファスはベッドの上に腰を落とした。

「弟の妻を助けるのは、当たり前だろう」

「……宮廷でも、他人の私を助けてくれました」

「あのときの礼はもう貰ったはずだ。いつまでも気にするな」

なにを言っても、ルーファスは淡々と事実を突きつけてくる。
こんなにもそわそわとしているのは自分だけなのかと、セシルはなんだか悔しくなった。
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