イジワル騎士団長の傲慢な求愛
突然、ルーファスの右手がセシルの腰に回り、ぎゅっと身体が密着した。
驚いて逃げようとしたセシルだったが、彼の真摯な眼差しに、思わず動けなくなってしまう。

「そんな恰好で部屋に押しかけてきて、あまつさえそんな顔を見せて。抱いてくれと言っているとしか思えないぞ」

「……ル、ルーファス様……?」

「まさかお前は、俺の理性を試してるんじゃないだろうな」

わずかに細めた瞳は甘く、けれど真剣そのものだった。
戸惑うセシルの背をベッドに押し付けて、ルーファスはその上に覆い被さる。

「残念ながら、俺はそこまでお優しい男じゃない」

「……冗談……ですよね? またからかっているんでしょう?」

「どうだろうな。試してみるか?」

ルーファスの指が、セシルの顎に触れ、庭園で花を愛でていたときみたいに、セシルの顔を優しく持ち上げる。

「……人の気も知らずに、お前はいつもそうやって俺を見つめてくるな。その度に俺がどんな思いをしているか、教えてやる」

彼の前髪が額に落ち、鼻先にふっと吐息が吹きかけられる。
平静であろうとする意思に反して、胸を打つ大きな鼓動がドクドクと体を揺らしていて、それが伝わらないようにするのにセシルは必死になっていた。
< 73 / 146 >

この作品をシェア

pagetop