イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「漆黒の、夜空のような瞳だな」

ルーファスの指先が、セシルの目尻に触れる。
その形を辿るようになぞって、ルーファスはうっとりと囁いた。

「その瞳に俺だけを映せ。他の男は映すな」

指のあった場所に彼の唇が触れて、セシルの体は意図せずびくりと震えてしまった。
いつの間にか、呼吸が荒くなっていて、息をするたびに小さな悲鳴が喉の奥から漏れてしまう。

「それから、この白い肌は――」

頬から首筋へと、つうっと人差し指を滑らせて、ルーファスは甘い囁きを続ける。

「触れた男は、俺が初めて、でいいんだよな?」

首筋に、ルーファスの温かな舌が滑り、あっ、とわずかな声を上げて、セシルは仰け反った。

この情熱的な触れ合う感覚を、セシルは知っているような気がした。
あの晩、口づけを交わした相手は、やはりルーファスだったのではないだろうか。今になって、セシルの心が、そしてなにより体がそう告げている。

「それから、その蕾の様な唇で――」

「……待って」

「俺以外の名を口にするなよ」

「ルーファス……やめ……」

恥ずかしさに顔を背け手を突っ張るも、あっさりと退けられて、再びベッドに押さえつけられる。

けれどそれは期待通りでもあって、セシルは自分の中の矛盾した感情にいっそう困惑した。

「その声と顔は、誘っていると解釈していいんだよな?」

セシルの唇のほんのすぐ脇で、ルーファスが問いかけてくる。

「……違うと言われても、今さら止めることはできないが」
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