イジワル騎士団長の傲慢な求愛
やがて、クローゼットの扉が外側から開かれた。
急に強い明かりを注がれて、セシルは目を瞬かせる。正面には、うつむき表情を隠したルーファスがいた。

「……あの……ルーファス……様」

聞きたいことは、山ほどあった。

本来、セシルが結婚するはずだったのは――
あの日、仮面舞踏会で口づけを交わしたのは――

けれどセシルの唇はその質問を紡げない。
真実を知るのが怖い。そして、知ったところでどうしようもない現状を突きつけられるのが恐ろしい。

やがて、うつむいたままのルーファスが口を開いた。

「……出ていけ」

他者を寄せつけない、低く、渇いた声。
髪の隙間から覗く冷ややかな蒼が、セシルの胸に突き刺さる。

「……ルーファス様、あの――」

「いいから、さっさと出ていけ。またさっきのように襲われたいのか」

「きゃっ」

強い力で腕を引かれ、手首に鋭い痛みが走る。

「聞かなかったことにしろ」

ルーファスの鋭い命令がセシルの体を痺れさせる。

「すべて忘れろ! いいな!」

「い、いやです!!」

咄嗟に首を振って拒否したセシルに、ルーファスの手は止まる。
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