イジワル騎士団長の傲慢な求愛
当のシャンテルも驚いたらしい。綺麗な瞳を真ん丸くさせている。

腰を抱かれ、セシルの隣の席にエスコートされたシャンテル、しばらく呆然としていたが、時間が経つにつれ実感が湧いてきたのか、頬に赤みが差してきた。

ふたりを見ているのが辛い――なぜだかそんなことを思って、思わずセシルは顔を伏せる。
その様子に気がついたのか、ルシウスが気使わし気な瞳を向ける。

「……最後にセシル様とふたりでお話をさせていただいてもかまいませんか? もうしばらく会うこともできないと思うので」

場所を変えようとルシウスが立ち上がるが。

「それなら、俺たちが席を外そう」

すかさずルーファスがこの場を譲った。

「じっと座っているのは嫌いなんだ。シャンテル。この屋敷を少し案内してくれないか」

『シャンテル』――いつの間にか『様』が抜けている。つい先ほどまで、呼び捨てにしていたのはセシルだけだったはずなのに。

お姫様にするみたいに、ルーファスはシャンテルの手を引くと、ふたり仲良く部屋を出て行ってしまった。
去り際に扉の隙間からルーファスがシャンテルの肩に手を回すのが見えた。
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