【完】溺愛飛散注意報-貴方に溺れたい-
「…場所、変えるか」
「…はい」
自然と手を絡ませてくれるせんぱい。
私は、きゅうっと少しだけ力を込めてその手を握り返した。
せんぱいが向かった先は、私もよく知っている場所だった。
そこは、せんぱいと付き合う前に、avidのライヴにいった場所。
小さなライヴハウス。
そこに着いたせんぱいは、少しだけ困ったような、どこか儚げな顔をして私の方を見つめた。
「せんぱい…?」
「…とりあえず、中入るか」
「え、でも…」
「大丈夫だ。気にすんな」
せんぱいはそういうと、私の手を引き、すたすたと中へ入り込んでしまう。
私は、せんぱいの行動の意図が読めずに、なされるがままで…。
そうこうしている内に、バックライトだけついているステージに辿り着く。