【完】溺愛飛散注意報-貴方に溺れたい-
「お前にはさ…俺のこと、ちゃんと知って貰いてぇなって…そう思った」
少しぶっきらぼうに話し始めたせんぱいは、どうやら緊張しているみたいで、繋いだ手がほんのり汗ばんでいる。
「せんぱいの、こと…?」
「あぁ…あんま良い話じゃねぇし。格好悪いって思われっかもしれねぇけど…でも、やっぱり、…好きな女に自分の全部知って貰いてぇなんて思ったのはこれが初めてだからな」
「……」
私は、黙り込んで、せんぱいの言葉の続きを待つ。
きっと、そうすることで、せんぱいが話しやすくなるだろう、そう思ったから。
「俺の親父は、俺の小せぇ頃にガンで死んだんだ…俺はガキの割に、それが酷く怖くて悲しいもんだって思った。…けど、かぁちゃんは違った。親父が死んで1ヶ月もしない内に、何処の誰だかわかんねぇ男家に連れ込んで、再婚しやがった…」
そういうと、せんぱいはその頃のことを思い出したのか、ギリッと奥歯を噛み締める。
私は、そっと空いてる方の手で、せんぱいの背中に触れてなんとかそれを止めさせようとした。
「わりぃ…。で、俺の居場所は何処にもなくなった。ありきたりだろ?けど、その時まだ11くらいだった俺には、どうしようもなくてな。まるで捨てられるようにして親父のじぃさんのとこに追いやられたわけだ。俺は、荒れたよ…今思えばバカみてぇに…そんな力もねぇ癖に…」