【完】溺愛飛散注意報-貴方に溺れたい-
きーんこーん。
午後の授業開始を知らせるベルが鳴って、せんぱいは名残惜しそうに私を見つめた。
そして、すくっと立ち上がると、私の手を優しく引っ張って、そのまま立たせてくれた。
「じゃあ、また放課後、な。…じゃ、教室まで送ってく」
「や、そんな!大丈夫ですよ?階段降りたらすぐですもん…」
「俺が送って行きてぇんだから、いいんだよ。おら…手、寄越せ」
「あ…」
せんぱいは、なんとなく不機嫌そうな顔をして前を向いてしまう。
私は、何か良くない事を言ってしまったのかと、戸惑った。
「か、薫せんぱ…っ」
「…ぷ。そんなびくびくすんなよ。お前に怒ってるわけじゃねぇから。大丈夫だ」
「…もう!せんぱいってば!」
「くくくっ。お前はそのままでいろよ?」
「え?」
「いんや。なんでもねぇよ。おい、さっさとしねぇとこのまま教室じゃねぇとこに拉致るぞ?」
「?!」
「うそだ。ばぁか」
くしゃり
意地悪を言う癖に、私の髪を撫でる指先は優しくて、いつの間にかがっちりと腰に回された腕は…嫌になる程心地良かった。