過保護なドクターととろ甘同居


囁くような静かな声が告げたのは、聞き間違いかと疑うような信じられない言葉だった。

窓の外に向けている視線が急に定まらなくなる。

黙ったままでいる私を、先生は自分へと振り向かせた。


「先生が……私なんかのこと」

「なんかって何だ」

「だって、なんかですよ……」


もう何をどう言ったらいいのかわからないくらい混乱している。

嬉しさと困惑の狭間で揺れ動く私へと、先生はそっと触れる。

大きな手が頬を包み込んで、見上げるようにして顔を上げた。


「その“なんか”が、俺は欲しいって言ってるんだ」


仕方なさそうに笑って、先生は私へと顔を近付ける。

触れるだけのキスをして私の顔を確かめると、今度は深い口付けを落とした。

< 107 / 144 >

この作品をシェア

pagetop