過保護なドクターととろ甘同居
「院長、そろそろ戻ると思うんだけど、それまで採血する方がいたら私やっておくから入れてもらってもいいわよ」
「あ、はい、わかりました。では……」
並んだカルテを見ながら木之本さんと相談していると、病院の入り口から男女の賑やかな話し声が聞こえてくる。
カウンターの向こうへと目を向けて、一瞬見えている光景が全て静止しているように固まっていた。
目を疑うなんて言葉があるけど、それはまさに今の自分の状態を言うのか、なんて単純に思った。
「あれ、って……」
横から聞こえた木之本さんの声がやたら遠い。
挨拶するこも忘れ、呆然と一点を見つめる私の前へと、入ってきた女性が一人でやってくる。
「あの、初めてなんですけど」
そう言って受付けカウンターに出された保険証と母子手帳。
「通ってた産婦人科の先生がしばらく休診することになっちゃって、今後こちらで診てもらうことはできますか?」