過保護なドクターととろ甘同居
病院の顔として、何が起こっても毅然とした態度で対応しなくてはならない。
だけど、声帯を取り去られてしまったように声が出ない。
完全に宙を泳いでしまっている視線が、何ともなさそうに待合室を眺めている俊くんの横顔を映していた。
私の姿に気付いているはずなのに、どうやら知らん顔を決め込むつもりらしい。
顔には出していないけど、私がこの病院の受付けに座っていたことに相当驚いているはずだ。
もし知っていたなら、ここには絶対に訪れない。
こんな状況になって、あらゆることが繋がっていくなんて思いもしなかった。
この人のお腹の大きさを見れば、俊くんの態度の意味も、私への裏切り行為も、一目瞭然。
そういうことだったのか、と全て納得がいった。
「三枝さん、引っ込んでいいわよ、私が対応するから」
木之本さんが耳打ちでそんなことを言ってきてくれる。
目の前がぐらぐらして、動悸が尋常じゃない。
カウンターの椅子からも動けず、気を使った木之本さんが横から受付け対応を始めてくれていた。
「木之本さん、いいよ」
そんな時だった。
受付けの後方から、先生の声が木之本さんを呼んだ。