過保護なドクターととろ甘同居


「あの、先生……この間は、ありがとうございました」


改まってお礼を口にした私を、先生は何のことを言われているのかわかっていないような顔をして見つめる。

一呼吸置き、隣に座る先生に真っ直ぐ視線を向けた。


「診察を……断ってくださったこと、です」


私の言葉に、先生は黙ってグラスを傾けた。

カランと、溶けた氷が涼しげな音を立てる。

何だか間が持たなくなって、再びキツいお酒を口にした。


「俺が個人的に診る気がしなかっただけだ。気にしなくていい」


そう言った先生は、「……って、医者が言うセリフじゃないな」とフッと息を漏らした。


「そう、ですか……でも、嬉しかったです。なので……お礼を言いたかったので」


踏ん切りは確かについたものの、あの時の衝撃は数日が経過した今でも消え去らない。

ふとした瞬間に頭の中に蘇っては、胸がギュッと締め付けられる。

あんな形で裏切られたことは、そう簡単には忘れられない。

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